好奇心を広げれば雇用の機会も増えてくる
2008年8月21日
Paul Smaglik
Moderator of the Naturejobs
Nature 454, 913 (13 August 2008) | 10.1038/nj7206-913a
先週、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアメリカ生態学会が年次総会を開催したが、そのキャリアセッションに参加していた8人のスピーカーは、職種はそれぞれ異なるが、基本的なモチベーションはまったく同じだという点で意見が一致した。それは好奇心である。「今でも13歳のときと同じことをやっているよ。つまり、池に飛び込んでそこに生息しているものを観察するんだ。」テキサス大学オースティン校の生態学教授、Mathew Leibold氏は、40人ほどの大学院生やポスドクを前にそう語った。だが、キャリアへの道と言っても、アカデミックな研究者から保存科学者、公的研究機関の職員まで、実に幅広い。
生態学の道を無事に進んでいくには、他の専門分野と同じく、高い見識や幅広いスキルが求められる。以前Leibold氏の元でポスドクとして働いていたBryan Brown氏は、自分は師匠(同氏の前にスピーチをした人物)の「面目をつぶして」しまったようだ、と冗談を飛ばした。つまり、特別研究員としてデータ解析にいそしむ身分を捨て、自分の手を汚すことを選んだのである。「私はフィールドに出ているのが好きなんでね」と、現在はサウスカロライナ州にあるクレムゾン大学で水界生態学の助教授を務めるBrown氏は言う。そしてLeibold氏の研究室で計算技能を身につけたおかげで有利に就職活動ができた、とも付け加えた。
セントルイスのワシントン大学の生態学助教授、John Orrock氏は、幅広いスキルを身につけておくと職探しのときに選択肢が広がるが、研究外の活動も同じように重要だと述べ、セッションの参加者に、会議の運営や委員会活動、地域の生態に積極的に関わることを奨励した。「生態学のあらゆる側面に首を突っ込むことだよ。積極的に関わっていれば自ずと専任研究者のポジションが近づいてくる」と同氏は言う。
パネリストたちと同様、ほとんどの科学者が、興味があるからという理由で自分が選んだ分野を追求している。そうした生まれつきの知的好奇心に助けられ、科学者はグラントを獲得し、論文を発表し、職に就くことができるのだ。しかし、研究者が自分の守備範囲を広げるのを怠ると、逆にその好奇心が視野を狭めてしまうことになりかねない。あらゆる分野の科学者は興味の対象を広げていくのが賢明である。当面は無関心なことにも強いて注意を払うようにすれば、やがて興味ある分野に多くの時間を費やすチャンスも出てくるはずだ。
英語の原文:Expanding your curiosity can lead to more job opportunities