Nature Careers 特集記事

米国立アカデミー委員会、専門職科学修士を支持

2008年7月31日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 454, 547 (23 July 2008) | 10.1038/nj7203-547a

先ごろサンディエゴで開かれた科学会議の席上、若い科学者たちから、今はどういう職種が注目されているのか、という質問を受けた。そこで私は、産業界、とりわけ製薬業界が業界独自のニーズに合った修士号取得者を探していると答えた。「じゃあ、博士号はダメってことですか?」と1人の若い科学者が挑発するように言い、大学の立場の弱さを指摘した。そんなことはない。絶対に。

だが、こうした修士号の需要増がきっかけとなって、専門職科学修士(PSM)学位と呼ばれる米国の資格が設置されることになった(Nature 445, 458; 2007を参照)。PSM課程では、企業が好みそうな、チームの育成やコミュニケーションスキル、法規制に関する情報、業界の常識などがまとめて習得できる。しかも、わずか2~3年でそれが可能だとすれば、博士課程やポスドクとして数年間を費やしたあげく、結局は望みどおりの職に就けない選択にためらいを覚える科学者にとっては魅力的といえよう。

7月11日、米国立アカデミー委員会は、PSMの適所は製薬、バイオテクノロジー、防衛の分野であると考え、PSMにお墨付きを与えた。科学の専門知識に加え、コミュニケーションやビジネスのスキルも学べるという点を支持したのである。コンピュータ科学や地球科学の分野では、従来の修士課程でも産業界に進むための十分な準備が可能だが、物理学や生物学、化学など、扱う範囲が広い専攻分野では、教職以外の仕事に就くための実用的なスキルをほとんど学ぶことができない。

ではPSMの圧勝かというと、そうでもない。将来的に学生にとって有望な選択肢となるためには、産業界で成功を収める修了生を輩出しなければならない。それにコストの問題もある。米国では、博士の研修費はグラントか奨学金で賄われることが多い。そのため生命科学の大学院生の中には、博士課程へのこだわりを捨て、無料で従来の修士号を取得する者もいる。多くの学生にとってPSMは有料になるはずだ。しかし、それだけの価値があるといえるだろうか。それがすぐにでも高給職に結びつくのであれば、間違いなくあるだろう。科学者や企業の側は、新たなコースの開設におおむね好意的なようだ。今こそ学生や研究所は、それが投資に見合うものかどうか、はっきりと見きわめる必要がある。

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