Nature Careers 特集記事

研究職に関する調査とさまざまな解釈

2008年7月11日

Paul Smaglik
Moderator of the Naturejobs

Nature 454, 131 (3 July 2008) | 10.1038/nj7200-131a

英国の大学109校を対象とした調査の結果、アカデミックライフが徐々に快適になりつつあることが分かった。英国ハンプシャー州にある大学雇用者協会の所得データサービス(Incomes Data Services for the Universities and Colleges Employers Association)が行った調査によると、他の公的セクターや民間セクターと比べて、研究者は労働時間が短く休日が多いうえに、高額の育児手当や年金制度、疾病手当が保証されているという。関連するレポートを見ても、研究者の給与は2002年から2007年の間に30%アップするなど、ここ数年で改善の傾向を見せており、2007年の平均給与は42,588ポンド(85,000米ドル)に達した。

ただ、研究者の雇用をこのように甘くした結果、嫌な後味が残るようになった。ロンドンで発行される高等教育情報紙、タイムズ・ハイアー・エデュケーション・サプリメント(THES)において、大学組合書記長のSally Hunt氏は、上記のレポートが実際の労働時間ではなく契約上の時間にもとづいたものであり、そのため「誤解を招くような表現」になっていると述べている。他の調査によると、研究者たちは、同レポートが契約労働時間の平均として示す週35時間どころか、50時間以上も働いているという。関連ブログに寄せられたTHES読者の書き込みを見るかぎり、研究者たちは週の契約労働時間をはるかに超えて働いており、仕事を間に合わせるために休日を返上することも多いようだ。休暇を取る場合にもよく仕事を持ち帰るという。Hunt氏は、給与に関するかぎり、研究者の待遇が改善されていることは認めるものの、民間セクターの同等の職業には依然として大きく水をあけられていると述べている。

これは単なる無いものねだりだろうか?研究職の人気が極めて高いことを考えれば、そうには違いない。研究者は余計な雑務などしなくてよい、と言い張る者もいるかもしれない。その代わり、論文を発表してグラントを獲得したいなら、いわゆるサービス残業は避けられないわけだが。

このレポートはいくつかの問題点を指摘している。不安定な年間予算が研究スタッフに影響し、短期契約の急増につながると警告を発しているのだ。本当に注意を払うべきなのはこうした要因である。さもないと、労働時間に難癖をつける余裕のある正規雇用の研究者が減少する一方、ますます多くの研究者が、少ない助成金を求めて身をすり減らすこととなる。

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