キャリアは時に偶発的かつ計画的である
2007年6月4日
Paul Smaglik
Moderator of the Naturejobs
Nature 447, 609 (30 May 2007) | 10.1038/nj7144-609a
今月の初旬、Naturejobs が英国バーミンガム大学で主催した科学の専門職に就く機会に関する座談会において、「キャリア(career)」という言葉の一見対照的と思われる定義が話題となった。オックスフォード英語大辞典の定義は「生涯を通じた経歴あるいは進歩、生涯の仕事として従事する職業」であり、おそらくこれが真っ先に思い浮かぶものであろう。それは一定の計画性を示唆し、ある意味順調な進歩を暗示している。
しかし、バーミンガム大学の薬理学の講師であるAlison Cooper氏は、我々7人のパネリスト全員に当てはまるもう1つの定義を引用した。それは「暴走」である。
最終的な職業が完全に偶然によって決まるということはまずあり得ない。しかし我々の場合は、科学における多くの発見と同じように、ある程度のよいものを見つける才能と現実世界の状況が功を奏した。Cooper氏はもともと生体における薬理学を目指すつもりだったが、博士課程を修了した当時、業界にはこうした特殊なスキルに対する需要がほとんどなかく、言うまでもなく、そうした状況はこの10年間ですっかり変わった。そして彼女は教師の道を選んだ。
Andy Garner氏は、小手調べにアストラゼネカ社の求人に応募し、面接を受け、そして医薬品開発のグループ・リーダーとしての地位を得た。
私は新聞向けの医療関係のライターを目指していたが、まさに文字通り偶然に(Nature 430, 705; 2004を参照)ウィスコンシン大学マディソン校での教職と研究職に天分を見いだした。その後、この10年を科学関係の読者を対象とした執筆活動に費やしている。
こうした不安定な「暴走」にもかかわらず、我々パネリストの現在の到達地点は完全なる偶然の産物ではない。全員が転換することのできる技術を見つけ出し、それを深め、拒絶の嵐を乗り越え、個人および職業上のネットワークを活用し、そしておそらくこれが最も重要なことだと思うが、自分のスキルと興味にふさわしい人脈、場所、プロジェクトを探し求めた。その過程で、「キャリア」の第一の定義を満たしたのである。