SPECIAL REPORT

研究者キャリアアンケート:幸せな研究者、不幸せな研究者ブックマーク

For love and money

Nature 465, 1104-1107 (23 June 2010) | 10.1038/nj7301-1104a

Nature では今年、世界各国の研究者を対象に、研究環境についての満足度調査を行った。確かに日本などは、満足度を低く見積もる国民性があり、データをそのまま受け取ることは避けたい。しかし、例えば、研究者が仕事に対して感じる満足度は給与以外の要素によっても大きく左右されるなど、全体的な傾向は各調査項目からうかがい知ることができる。

Gene Russo

米国立衛生研究所(NIH;メリーランド州ベセスダ)のポスドクたちは、しばしば悩み事をNIHポスドク支援課長 Lori Conlan に打ち明ける。なかには、既に自分の将来をじっくり考え、学術研究機関でのポストを探したり、企業に就職することを検討したり、普通とは異なる職業に就こうとしたり、などいろいろ決断している者もいる。その一方で、将来を決めかねているポスドクもいる。そのほとんどは、この先どうしたらよいかがわかっていない。「自分の能力をよく理解できていなかったり、非現実的な期待をしていたりします」と Conlan はいう。彼らは、高額の初任給をもらえるはずだと思い込んでいるのだ。また、十分な指導を受けられる学術研究機関でポストを見つけられるだろうかと心配している者や、企業の「チームサイエンス」環境に順応できるかどうか不安に思っている者もいる。ポスドクたちが気にするこうした項目のひとつひとつが、今後、研究者としてキャリアを重ねていく過程で、どれだけ充実した研究生活を送れるかを左右することになる。

表1
表1
各国の研究者の待遇に対する満足度(満足= 1.0、どちらでもない= 0.5、不満= 0)は、すべての回答の平均。 | 拡大する

もちろんこれはNIHのポスドクだけの問題ではない。若手からベテランまで、世界中の多くの研究者が、給与や仕事について充実した妥当なものであるのかどうかよくわかっていない。もちろん、大学院、ポスドクを経て学術研究機関や企業に就職するというキャリアステージの流れはよくわかっている。けれども、地域や待遇(医療保険、独立性、指導を受けられる環境にあるか、など)別に、仕事に対する満足度を調査するのはなかなか難しい。

図1:研究者の満足度と国民の幸福度指数
図1:研究者の満足度と国民の幸福度指数 | 拡大する

Nature は、今回初めて研究者の給与とキャリアに関する調査を行った。我々は研究者の仕事に対する全般的な満足度と、それに寄与する要因について、キャリアステージ、性別、地域ごとに検討した。この調査には、世界数十か国の1万500人以上の研究者から回答が寄せられた(調査方法の詳細については go.nature.com/aSZqch を参照)。

調査サンプル数の多い16か国のうち、あらゆる面で最良の環境で研究できる国の第1位となったのはデンマークだった。デンマークは、給与、医療保険、年金制度、独立性などの項目で満足度スコアが最も高かった(表1、図1)。最下位だったのは日本で、各項目の「非常に満足」の割合は極めて低く、退職金制度に対しては2パーセント、独立性については10パーセントだった。科学新興国であるインドと中国の満足度も低かったが、仕事に対する全般的な満足度が前年よりも高まったという回答の割合が、ほかのほとんどの国よりも高かった。

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