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産学協働イノベーション人材育成協議会 記念シンポジウムブックマーク

産官で理系人材の育成事業を発足、国内12大学、8社が連携

東京大学、京都大学など12大学と東レなど8社は、日本の技術革新の発展に寄与し、グローバル競争激化時代に対峙できる理系人材の育成などを目的とする「産学協働イノベーション人材育成コンソーシアム事業」を発足させた。また、本事業の運営母体となる一般社団法人「産学協働イノベーション人材育成協議会」(代表理事・会長:淡路敏之京都大学理事)が1月20日に設立された。事業発足にあたり、1月22日に、記念シンポジウムが東京・半蔵門のホテルグランドアーク半蔵門で開催された。

本事業では、大学が大学院に在籍する学生のIDとなる情報―研究内容、研究実績、研究スキルなど―をデータベース化し、企業は共同研究、研究開発やインターンシップ制度の内容などを登録する。そのデータベースを大学と企業が検索できるシステムの構築を行い、一元化したシステムでインターンシップを希望する院生や参画企業を相互に検索・マッチングさせる。企業は、2~3ヶ月のインターンシップ制度に活用する理系人材を選択、採用できる。最終的には、この事業を通じ、グローバル市場で日本企業の産業競争力向上に貢献できる理系の人材育成を目指ざし、日本の技術革新力の強化を狙う。「子供たちの理科離れもあり、理系の後継人材の安定的な確保が安易ではない状況にある。グローバル競争が激化する中、イノベーション創出に向けた取り組みは企業にとっては生命線」と三菱電機の常務執行役で本事業協議会の副代表理事である堤和彦氏。「大学で推進する技術志向に基づく基礎研究と企業が進める顧客志向の応用研究・応用開発を早い、若い時期に経験して、将来の産業界をけん引し、イノベーションを起す人材に育ってほしい」と語った。

京都大学総長 松本紘氏
京都大学総長 松本紘氏

2014年1月末現在、参画大学は、北海道、東北、筑波、千葉、東京、東京工業、早稲田、慶應義塾、京都、大阪、神戸、九州の計12大学。参画企業は、合計8社で、ダイキン工業、東レ、パナソニック、Hitz(バイオ)協働研究所(日立造船)、三菱重工業、三菱電機、村田製作所、DMG森精機だ。今後3年で、2016年度には、インターンシップ実施企業を50社へ、インターンシップを希望する登録学生を2,000人まで増やし、企業派遣できる院生を200人にするのが目標、と幹事校である京都大学理事で、協議会の代表理事である淡路敏之氏は意気込む。年間100万円で運営母体である協議会にメンバーとして入会、本事業に参加できる。

本事業は、平成25年度に経済産業省が1.0億円で予算計上・補助している「中長期研究人材交流システム構築事業」をベースとしている。国内が人口減少や少子高齢化という構造的課題に直面する中、日本の経済再生および成長戦略の推進を安倍晋三政権が掲げており、本事業は、グローバル競争激化時代の日本の競争力向上のために安倍政権が策定した科学技術イノベーション政策の一環として、科学技術革新に適した環境づくりための重点的な取り組みのひとつとなっている。「イノベーションが日本の経済発展には必要不可欠。安倍政権の成長戦略の中でも積極的に取り組んでいく」と、経済産業省の産業技術環境局長片瀬裕文氏。「本事業を通じて、大学は産業の人材ニーズを知る機会となり、企業にとっては博士課程の学生を積極的に雇用するチャンスとなる」という。京都大学総長の松本紘氏はシンポジウムのオープニングで「グローバル競争時代なので、産業界も海外のインターンシップでグローバル展開しているし、大学も世界の大学と競合してすばらしい研究者を育成していくという意味で世界をみないといけない。いずれは日本国内にあるグローバル企業の拠点を軸にその本国でのインターンシップを取り入れる」と抱負を語った。

大学は、院生に企業でのインターンシップにより実践研究を積んでもらい実社会でのニーズをくみ取ることができ、その成果を大学での教育にフィードバックできる、等、大学教育の場が広がる。企業は、基礎研究などを行ってきた専門性のある学生に自社で応用研究を行ってもらい、R&Dに役立てることができる、等、企業の技術革新に専門性の高い人材を活用できる。学生にとっても、企業でのインターンシップに積極的に関わることによって、大学ではできない実践研究や共同研究に参画でき、さらに専門分野や研究内容を広げ、自己研さんや将来の就職活動などに役立てられる、等、メリットが高い。「大学はseeds志向、企業はneeds志向。そのギャップをどう埋めていくか」が大きな課題だが、この事業がその差を埋めていく機能となるだろう、と文部科学省の高等教育局長吉田大輔氏。

三菱電機常務執行役 堤和彦氏
三菱電機常務執行役 堤和彦氏

東レの常務取締役研究本部長出口雄吉氏による「新しい価値創造をけん引する人材」という基調講演では、世界は環境・資源エネルギー新時代の到来で、歴史的に大きな転換点を迎えており、現在、パラダイムシフトに対応したこれまでとは異なる新しい価値の創造が求められている、と語った。地球温暖化など、地球規模での課題解決に向けて、科学技術への期待が益々高まっており、地球および人類の持続的成長を確保するという視点が重要な時代になった、と出口氏。「地球規模の課題はひとつの技術領域では決して解決しえない。そのためには、変化に対する独創的な発想による革新をアカデミアから産業界まで広く連携して取り組む産官学連携型のオープン・イノベーションが重要」という。新たな価値創造をけん引する人材に必要な資質として、「高い専門性、強いリーダーシップや使命感。そして、共感的にものをとらえることが多面的な見方や俯瞰力、様々な変化への対応力を兼ね備えることが求められる。さらに組織の外に対して、異分野の多様な人材を巻き込んだ競争の場を作りだして、リードしていくことも求められる」と述べた。

本事業へ期待することとして、早稲田大学総長鎌田薫氏は、登録学生目標人数が数年で2000人であれば「参加企業は目標数の10倍近くあってもよい」と要望。東京工業大学学長三島良直氏は、インターンシップにはマッチングがカギを握るが、同時に院生のキャリアに対する意識改革も必要と述べた。千葉大学学長の齋藤康氏は「極めて新しい先駆的なかつ挑戦的な取り組み」と期待感を示した。三菱重工業の取締役常務執行役員水谷久和氏は、グローバル競争の中で日本企業が勝ち残るためにはすぐれた技術や斬新な発想を基盤とする製品やビジネスモデルを作ることが必須で、そのためには「従来の枠にとらわれない大胆な発想による新たな価値を生み出すことができるイノべーティングな若い人材を育成することが急務。また、本事業をさらに発展・拡大させるために最も重要なことは、新たなシステム構築をしっかりして、具体的な成果を作り、信頼性と利便性を高めることだ」と結んだ。最後に、協議会より、大阪大学理事・副学長東島清氏とダイキン工業の常務専任役員稲塚徹氏のクロージングのあいさつで閉会となった。

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