Press release

2009年 Nature メンター賞受賞者決定

2009年11月30日

ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)は2009年12月1日(火)、本年のNatureメンター賞、2件2名の受賞者を発表します。

    (Lifetime Achievement:60歳以上): 大沢文夫 愛知工業大学 客員教授
  • 中堅キャリア賞(Mid-career achievement:59歳以下):
    北野宏明 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所取締役所長 特定非営利活動法人システムバイオロジー研究機構代表

授賞式は同日、駐日英国大使公邸にて行われ、Nature編集長のDr. Philip Campbellより賞状と副賞(150万円)が各受賞者に授与されます。

Natureメンター賞とは

若い研究者に対して日々行われる肌理の細かい指導(メンタリング)は、研究室におけるいろいろな活動の中でも最も重要である一方、最も報われることの少な い作業のひとつです。しかし、優れたメンタリングは、学生や若い研究者に卓越した科学的・工学的業績をもたらすだけでなく、彼らの才能と個性を伸ばすこと にも寄与しています。Natureはメンター賞を2005年に創設し、若い研究者を育てることに尽力した研究者に毎年賞を贈り、敬意を表してきました。これまで、英国、オーストラリア、南アフリカ、ドイツで開催し、5回目となる本年はアジア初の日本での開催となりました。

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◆本年の受賞者について

受賞者の詳細について »

「本年のメンター賞にノミネートされた候補者の基準の高さに私たちは大変感銘を受けています」とCampbellは語っています。「その中でも、選ばれた受賞者には際立つものがありました。」

大沢氏は統計力学を学んだあと、1954年に筋肉の収縮機能に関わるたんぱく質「アクチン」の重合体形成現象の実験的解析に着手、モノマーとポリマーの動 的平衡などを解明しました。以降、生物物理の研究者としての業績は、タンパク質機能から高分子相互作用・電解質論と広く異分野にまたがっています。生物運 動については1分子レベルから細胞運動、さらに高次機能の生物行動にまで広がっており、「曖昧さ」や「ゆらぎ」の重要性を独自の視点から指摘しています。

大沢氏は「大沢牧場」という愛称でも知られています。この言葉には「多様なバックグラウンド、経歴、考え方をもつ人々がいて、いろいろのテーマのおもしろ い研究をグループで、あるいは単独で行っています。牧場という言葉には、その境界ははっきりしていなくて、出入り自由であるという状況が表現されていま す」と大沢氏は語ります。また、1960年代初期の時点で研究グループの3分の1は女性研究者であり、1970年代前後には多数の外国人研究者が研究室に 滞在するなど、大沢氏は常に時代の先駆者でもありました。大沢氏に影響を受けた多くの弟子・孫弟子は、非筋肉からのアクチンの初めての抽出、タンパク分子 モジュール構造の理論的発見、アクチンフィラメント研究、1分子生理学の創始、べん毛モーターなど卓越した業績を残しています。

北野氏は「個別の発見も重要ですが、私はパラダイムを変える、当たり前でない事を当たり前にするということに大きな価値を見いだしています」と話します。 1991年、ロボットと人工知能の長期的発展の為にロボカップ(RoboCup)を構想、97年から世界大会が開催され、今では数千人の研究者と学生が参 加する巨大国際教育プログラムに発展しています。また、ロボットにデザインの要素を取り入れるという新しい仕事のカテゴリーも創出しています。一方、同時 期に「生命をシステムとして理解する」研究分野としてのシステムバイオロジー(Systems Biology)も提唱し、その発展に尽力されてきました。これに関する個別の共同研究は、線虫の発生を完全自動追尾しデジタルデータとする顕微鏡システ ム、生物モデル記述言語の国際標準の開発などがあります。現在は「ロバストネス」の理論を構築し、特に抗がん剤の開発に応用しています。北野氏は日本人だ けでなく、多くの外国研究者にとってもメンターとしての役割を果たしてきました。北野氏に影響を受けた国内外の若手研究者は、システムバイオロジーや人工 知能の研究分野だけでなく、芸術・ビジネス界でも多く活躍しています。

本年は過去のケースを一部上回る多数の応募をいただき、選考は困難を極めました。選考において、審査パネルは受賞者の「新しいサイエンスを起こす力」「弟子が作り上げたものにバラエティーがあること」などを高く評価しました。

◆選考プロセス、受賞者のメンタリングの哲学、推薦者の声はこちらをご覧ください。

◆審査パネル(50音順)
青山友紀 慶應義塾大学デジタルメディアコンテンツ統合研究機構
伊藤正男 理化学研究所脳科学総合研究センター特別顧問
黒川清 政策研究大学院大学教授
榊裕之 豊田工業大学教授
野依良治 理化学研究所理事長
和田昭允(審査員長) 東京大学名誉教授

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