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データサイエンス:メンタルヘルス研究の新しい力

先日東京で開かれたシンポジウムでは、データサイエンスがメンタルヘルス研究に革新をもたらす可能性が探られた。

I-han Chouは、認知症の分野が進歩を遂げるためには、この分野に関わる全ての人々が協力することが重要だと考えている。

データサイエンスは、メンタルヘルス研究と神経学的研究の新しい時代の鍵を握る。東京で開かれたシンポジウムのテーマだ。「私たちは今、十字路に立っています。データサイエンスはここから、メンタルヘルス研究を変容させる見込みが大いにあります」と、Nature のシニアエディター、I-han Chouは述べた。「データサイエンスには、他のシステムからのデータ、例えば、私たちの行動のデータ、環境のデータ、さらには社会的相互作用に関するデータを取り入れる力があります」。

2019年10月24日、ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門であるヤンセンファーマの主催により、メンタルヘルスとデータサイエンスに関する「こころの健康とデータサイエンス」と題した特別シンポジウムが開催された。Chouは、現代医療ががんなどの分野ではとてつもなく大きな進歩を成し遂げているのに対し、メンタルヘルス分野における進歩は限られていると指摘する。

このような進歩の遅れは、懸念の種となっている。神経学的疾患は、今世紀の医学の最難題の1つであるためだ。うつ、自閉症、統合失調症、アルツハイマー病、そしてパーキンソン病などの状態は、多くの患者個人の生活、さらには彼らを介護する人々の生活をも破綻させる。そうした疾患は社会的な負担にもなる。そして、年齢が有意な危険因子である認知症などの精神疾患の有病率は、世界人口が高齢化するにつれて上昇するため、状況は悪化する一方なのだ。

しかし、見通しは決して暗くない。複雑なデータセット内に関連や規則を発見することに特化した分野であるデータサイエンスは、メンタルヘルスの問題に対する治療法開発の機会をもたらす。

「私たちは今、データサイエンスとメンタルヘルスにとって重要な時期に差し掛かっています」とChouは言う。「大きな転換が起こることに期待が高まっているのです。それには、非常に高品質なデータが必要になるでしょうし、人工知能と情報学における多大な革新も必要でしょう。そして、多数の基礎研究者や臨床研究者も必要になるでしょう」。

私たちは今、データサイエンスとメンタルヘルスにとって重要な時期に差し掛かっています。

国立精神・神経医療研究センター疾患研究部長の功刀浩は、うつ病の評価に用いることのできる有望なパラメーターについて発表を行った。うつ病は、診断、類型化や経過判定に用いられる生物学的指標が確立していないが、ストレスホルモンやモノアミンなどの体内物質は有望であることを示唆する証拠について述べた。別の有望なものとしては、脳の炎症を示唆する、脳脊髄液中の炎症性サイトカインをみる方法もあるという。また、うつは腸内細菌叢を変化させたり、あるいは逆に腸内細菌叢がうつ状態に影響を及ぼす可能性もある。最近の研究では、うつと腸内「善玉菌」の減少との関連が示されている。

厚生労働省の鈴木 康裕(左から2番目)は、メンタルヘルス研究を促進するための日本政府の優先事項について概説した。

精神障害は会話から明らかになることもある。東京大学の准教授である徳野慎一は、彼の研究チームが開発したスマートフォンアプリ(MIMOSYS)について述べた。このフリーアプリは、ユーザーの声に表れる喜び、怒り、悲しみ、平静などの感情を分析する。アプリは次にアルゴリズムを使って、うつの可能性を著しく高い精度で評価する。このアプリの開発は今後も進められ、パーキンソン病や認知症の可能性を検出できるようになることを目指している。PST社およびAGI社のセンシビリティ・テクノロジーを使って共同開発されたこのアプリは、官民の連携がいかにメンタルヘルス分野を前進させ得るかを示す好例である。

データ分析は、データサイエンスが精神疾患の複雑性の解明に大きく役立つ、もう1つの分野である。東京理科大学講師の篠崎智大は、新しい情報学と生体統計学的方法論の進歩によって、非常に複雑なデータセットの解釈が可能になりつつあり、そしてそれが推論と仮説検証にどのように役立ち、その結果、臨床試験の分析を大きく改善できるかについて話した。

コラボレーションにとっての重要な時期

総括として、Chouは、大学や企業の研究者、研究資金提供者、そして一般市民といった、全ての人々の間でのコラボレーションが必要だと述べた。シンポジウムには、これらの全てのグループの代表が参加しており、データサイエンスとメンタルヘルスにおける革新を促すことを視野に入れて、強力なコラボレーションをどのように築き上げていくかについて、パネルディスカッションが行われた。データサイエンスの力をメンタルヘルスの複雑性に適用するには、こうした類の議論が欠かせない。

「私たちが考え、感じ、行動し、互いに関わり合う仕組みを、脳の機能がどのように支えているかは、あまりよく分かっていません」と、Chouは話す。「基礎生物学の観点から見ると、まだまだ非常に長い道のりを進まなければなりません」。

Paul Stangは、データサイエンスが認知症の複雑な問題に光を当てることができると楽観している。

ヤンセンリサーチ&デベロップメント グローバルR&Dエピデミオロジー バイスプレジデントPaul Stangは、メンタルヘルス疾患を診断するための客観的な検査が不足していること、無作為化試験では高いプラセボ効果が見られること、未診断の人や誤診された人々が多数いること、そしてメンタルヘルスの問題に関連する偏見について話した。また彼は、心と体の間には複雑な相互作用があり、そのため精神疾患に伴って身体的疾患が見られること、またその逆もあると指摘した。そうした状況をまとめて、「これ以上に解決するのが複雑な問題はほかに思い浮かびません」とスタングは話す。彼は、カルテは患者の治療に必要なものというだけでなく、研究のための手段の1つと見る文化を作り上げていく必要があると強調した。もしそれに成功すれば、データサイエンスはメンタルヘルス研究を大きく前進させるだろうと、スタングは確信している。

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笠井 清登

東京大学
教授

功刀 浩

国立精神・神経医療研究センター
部長

篠崎 智大

東京理科大学
講師

末松 誠

日本医療研究開発機構
理事長

鈴木 康裕

厚生労働省
医務技監

徳野 慎一

神奈川県立 保健福祉大学 教授
兼 東京大学大学院 医学系研究科 特任研究員

菱山 豊

文部科学省
科学技術・学術政策局長

Paul Stang

ヤンセン グローバルR&D
バイスプレジデント

Michelle Kramer

ヤンセン グローバル
メディカルアフェアーズ
バイスプレジデント

吉村 英里

日本医療政策機構
マネージャー

I-han Chou

シュプリンガー・ネイチャー
Nature シニアエディター

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