【遺伝】南北アメリカの人々の遺伝子に記録された歴史
Nature Communications
2015年3月25日
Genetics: History recorded in the genes of the Americas
南北アメリカの人々の遺伝子構成に対して、さまざまな祖先集団の寄与があったことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、奴隷貿易やその他の歴史上の出来事が南北アメリカの人々の遺伝的特徴に与えた影響が明確になっただけでなく、これまで知られていなかったヨーロッパとアフリカの一部の集団の寄与も明らかになった。
遺伝学上、混血は、遠縁の集団が移動し、集団間の交配が生じた結果起こるとされる。今回、Cristian Capelliたちは、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカのさまざまな集団の大規模な遺伝学データセットに高分解能の祖先識別法を適用して、南北アメリカの現代人集団における混血の状況を調べた。
その結果、カリブ海地方の集団は、南米の集団と比べて、アフリカの集団の構成要素が多く含まれることが明らかになった。この点について、Capelliたちは、カリブ海地方に奴隷として連れて来られた人が多くいたという歴史上の証拠との整合性を指摘している。今回の研究では、南北アメリカの全人口に対するアフリカの遺伝的寄与の中で最も大きなものが西アフリカのヨルバ族集団だったことも明らかになっており、この地域で多くの人々が奴隷として連行されたという記録の正しさが確認された。
ヨーロッパの集団の遺伝的関与に関しては、今回の研究で対象となったヒスパニック系とラテン系の合計9集団のうち最も関与度が高かったのはスペイン人の集団だった。これに対して、アフリカ系米国人の集団とバルバドス人の集団に対する関与度が最も高かったのは英国だった。また、研究対象となった南米大陸部の6集団のうち5集団においてバスク地方の祖先集団の遺伝的特徴が初めて確認された。これは、16~17世紀の移民の結果である可能性がある。また、1つのアフリカ系米国人の集団では、フランス人の集団の関与度の高さが認められたが、それは植民地時代のフランス人の移民によるものだとCapelliたちは考えている。
doi: 10.1038/ncomms7596
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