注目の論文

【生態】絶滅に近づく生物種の生息状況

Nature Communications

2015年11月18日

Ecology: Living on the edge of extinction

生息地が外縁から中心部に向かって失われる生物種の方が、中心部から外縁に向かって失われる生物種よりも数多く絶滅することを明らかにした論文が掲載される。生息地の破壊形状が絶滅速度に与える影響を解明することは、全世界の生物保全活動に役立つ可能性がある。

生息地の減少は、生物種の絶滅の主要な原因の1つであり、(例えば、都市圏の拡大や自然生息地の農地への転換による)人為的なかく乱が主に関連しているが、個々の生物種に対する影響は生息地減少量と生息地内での分布状況によって異なっている。生息地の減少を原因とする生物種の絶滅を推定するために現在用いられている方法では、通常、生息地面積の減少だけが考慮され、生息域のどこが失われたのかは考慮されない。

今回、Petr Keilの研究グループは、4大陸(北米、南米、アフリカ、アジア)における鳥類、哺乳類、両生類の生息地の減少がその絶滅に及ぼす影響を調べた。この研究の対象領域の面積は484万km2で、それぞれの生物種の自然生息域全体をカバーするだけの広さだ。Keilたちは、生息地が外縁から中心部に向かって順次失われた場合、中心部から外縁に向かって順次失われた場合、生息地がランダムに失われた場合でどれだけの数の生物種が絶滅するのかを計算した。その結果、外縁から中心部に向かって生息地が破壊された場合に絶滅する生物種の数が最も多いことが明らかになった。

生息地が外縁から中心部に向かって破壊されるシナリオでは、絶滅する生物種の数が最大となるだけでなく、進化的多様性(生物種の固有性)の減少が最も大きく、1つの生態系内で複数の生物種が果たす役割の多様性の減少も最大となる。今回の研究結果は、大規模な生息地の破壊があると、生息域が縮小している生物種が生息域の外縁で生息しているケース(例えば、絶滅危惧種のエチオピアオオカミ)で絶滅のリスクが最も大きいことを示唆している。

doi: 10.1038/ncomms9837

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