【生態】ネオニコチノイドはトウヨウミツバチの嗅覚学習を阻害する
Scientific Reports
2015年6月18日
Ecology: Neonicotinoids impair smell-based learning in Asian honeybees
トウヨウミツバチ(Apis cerana)が花を嗅ぎ分けるように学習する過程にネオニコチノイド系殺虫剤が悪影響を及ぼすことを示唆する論文が、今週掲載される。この学習行動の障害が起こると、摂食が減ることがあり、ミツバチのコロニーの健康状態に負の影響を及ぼす可能性がある。
ミツバチに対し致死量に満たない量のネオニコチノイド系殺虫剤を投与すると、ミツバチの健康と採餌能力が阻害されることがあり、ミツバチの重要な花粉媒介サービスに連鎖反応的な影響が生じる可能性があることが過去の研究で明らかになっている。また、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)に対し致死量に満たない量のネオニコチノイドを投与すると、嗅覚学習が阻害される場合があることも複数の研究によって明らかになっている。嗅覚学習とは、ミツバチが花のにおいと花蜜の報酬を関連付けるようになる過程のことで、これによって採餌と花粉媒介が促進される。今回、Ken Tanたちは、アジアの農作植物と在来植物の重要な花粉媒介生物であるトウヨウミツバチにおいて同様の影響を観察した。
中国全土で広く用いられているネオニコチノイド系殺虫剤の一種であるイミダクロプリドを摂取した成体のミツバチは、摂取していないミツバチと比べて、長期嗅覚学習の獲得が抑制されていた。また、トウヨウミツバチの幼体に致死量に満たない量のイミダクロプリドを投与し、成体になってから検査を行ったところ、対照群のミツバチより短期嗅覚学習の獲得が劣っていた。今回の結果からは、成体になってイミダクロプリドを摂取した場合の方が深刻な影響が出る可能性が示唆されているが、こうした差異が生じる理由は明らかになっておらず、さらなる研究を実施する必要がある。
doi: 10.1038/srep10989
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