中国のエディアカラ紀末期の地層から、現代の蠕虫に似た動物の化石が発見されました(14ページ)。恐竜ほどの派手さはありませんが、これは驚きと感動をもたらしてくれる注目すべき研究成果です。まずは何より、この動物が堆積物の上を這い回っている途中で生き絶えた状態の化石として見つかったこと。論文のタイトルに「死の行進」という表現が入るほど、これは本当に珍しい発見です。この場面がそのまま化石化されたことはもちろん、その化石を実際に発見できたことにセレンディピティを感じます。そして、こうした動物がエディアカラ紀にすでに存在したことは、通説となっている「カンブリア爆発」の概念を覆す強力な証拠になるでしょう。このように、古生物の標本には、その姿だけでなく行動や生活までをも垣間見せてくれるものが少なくありません。私たちはそうした標本を目にして遠い過去に思いを巡らせるわけですが、ふと現実に戻って周りに目を向けると、人工の物質や構造物ばかりに囲まれていることに圧倒されます。人工物で世界を覆い尽くしているばかりか、自らの姿や生活、思想ですらさまざまな形で記録している私たち。再び5億年の時が流れた時、未来の生命体は一体、そんな人類の痕跡にどんな思いを抱くのでしょう。 |
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