Nature ダイジェスト
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Nature ダイジェスト
 
Nature ダイジェスト 2019年12月号
日本の再生医療がもたらすもの
2014年、日本は再生医療の規制緩和へと大きく舵を切った。再生医療が迅速に市場に出る筋道をつける2つの法律(再生医療等安全性確保法、医薬品医療機器等法)が成立したのだ。これにより、希望者は幹細胞を使った治療を受けられるようになり、この政策は国際的な広がりをも見せている。だが、迅速な認定や承認と引き換えに、患者が代償を払う羽目になる危険性もはらんでいる。
 
 
今月の無料コンテンツ
Editorials
 
Nature ダイジェスト
 
出版社は引用情報を公開せよ p41 Free access!
ほとんどの科学者が、被引用数指標の中身を自分自身で判断したいと考えている。そのためには、論文に記された引用情報を自由に利用できるようにすることが必要だ。
 
 
News in Japan
 
Nature ダイジェスト
 
欧州の生命科学研究と地続きに p27 Free access!
EMBOが、欧州以外の地域の若手研究者を応援する新しいプログラムを創設した。日本の研究者も利用可能なのだろうか。2019年10月、京都で開催されたSTSフォーラムのために来日したEMBOディレクター、マリア・レプチン氏に話を聞いた。
 
 
Comment
 
Nature ダイジェスト
 
科学と政治の150年 p28 Free access!
Nature 創刊からの150年間に研究システムがどのように形作られてきたかを振り返るエッセイシリーズの第一弾として、政府による科学支援のルーツをたどる。
 
 
News
試験管内の「原始スープ」からRNA塩基を合成 p2
地球上に現れた最初の生命体はRNAを主要成分としていたとする仮説を補強する化学的な証拠が得られた。
低・中所得国での耐性菌増加と食肉需要に関連 p3
食肉生産が急増する開発途上国が薬剤耐性菌のホットスポットに。
細胞が酸素濃度を感知し応答する仕組みの解明にノーベル医学・生理学賞 p6
受賞者3氏の発見は、貧血やがんなどの疾患解明の基盤となるものだ。
ノーベル物理学賞は系外惑星観測のパイオニアに p7
2019年のノーベル物理学賞は、太陽に似た恒星の周りを公転する系外惑星を発見した2人の天文学者と、宇宙の進化を記述する理論を構築した宇宙論研究者に授与される。
世界を変えた電池にノーベル化学賞 p9
充電式リチウムイオン電池の開発に貢献した3氏にノーベル化学賞が贈られることが決まった。
北極地方の異常な夏に海氷の融解が駄目押し p11
激しい山火事からグリーンランドの氷床の融解まで、北極地方は悲鳴を上げている。
カンブリア爆発より古い動物の這い跡 p14
動物は「カンブリア爆発」で急激に多様化したとする説に、先カンブリア時代の動物の化石が疑問を投げ掛けた。
エピゲノムからデニソワ人の肖像 p15
エピジェネティクスに基づいて描かれたデニソワ人の肖像は、ネアンデルタール人に似た幅広の顔立ちであった。
薬剤で生物学的時計が巻き戻った? p17
ヒトの生物学的年齢を刻むエピジェネティックな時計は、3種の薬剤の併用によって巻き戻せることが、小規模臨床試験で示された。
高速電波バーストの反復型の発見例増える p18
謎の天体現象、高速電波バーストのリピーター(反復型)を新たに8個発見したことが報告された。バーストの発生源の解明に天文学者たちは一歩近づいた。
News Feature
日本の再生医療政策がもたらすもの p22
日本は再生医療の規制緩和へと大きく舵を切った。この政策は国際的な広がりを見せているが、世界中の患者が代償を払う羽目になる危険性もはらんでいる。
News & Views
オンラインヘイトの力学 p33
ソーシャルメディアプラットフォームにおけるオンライン上のヘイトグループの力学の分析から、ヘイトスピーチを禁止する現行のアプローチではうまくいかない理由が明らかになり、オンラインヘイト撲滅に有効な可能性のある4つの戦略の基礎が示された。
小地震も大地震も始まりは似ている p36
小さな地震と大きな地震の始まりは、よく似ているのか、あるいは異なっているのか、という問題は、地震学の長年の課題だ。日本周辺の地震を分析した結果、一部のケースでは、小さな地震と大きな地震の始まりはほぼ同一であることが分かった。
フッ素とアミド基の連続導入に成功 p38
これまで合成が不可能だった、フッ素原子とアミド基を近接して持つ化合物群の実用的な合成法が考案された。この反応は、創薬分野で大いに役立つ可能性がある。
News Scan
先延ばしを防ぐ支援ツール p5
課題ごとにご褒美ポイントでやる気引き出す。
羽根の罠 p5
落とし穴で虫を捕まえるアリ。
Highlights
ハイライト p43
2019年10/3〜10/31号
Editor's Note
中国のエディアカラ紀末期の地層から、現代の蠕虫に似た動物の化石が発見されました(14ページ)。恐竜ほどの派手さはありませんが、これは驚きと感動をもたらしてくれる注目すべき研究成果です。まずは何より、この動物が堆積物の上を這い回っている途中で生き絶えた状態の化石として見つかったこと。論文のタイトルに「死の行進」という表現が入るほど、これは本当に珍しい発見です。この場面がそのまま化石化されたことはもちろん、その化石を実際に発見できたことにセレンディピティを感じます。そして、こうした動物がエディアカラ紀にすでに存在したことは、通説となっている「カンブリア爆発」の概念を覆す強力な証拠になるでしょう。このように、古生物の標本には、その姿だけでなく行動や生活までをも垣間見せてくれるものが少なくありません。私たちはそうした標本を目にして遠い過去に思いを巡らせるわけですが、ふと現実に戻って周りに目を向けると、人工の物質や構造物ばかりに囲まれていることに圧倒されます。人工物で世界を覆い尽くしているばかりか、自らの姿や生活、思想ですらさまざまな形で記録している私たち。再び5億年の時が流れた時、未来の生命体は一体、そんな人類の痕跡にどんな思いを抱くのでしょう。